ブックレビュー
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吉田松陰―異端のリーダー


 
著者 津本 陽
 
角川ONEテーマ21(800円+税別




吉田松陰―異端のリーダー


 「吉田松陰」に関する著書が書店に何種類も並ぶ。松陰ブームはこれまでにもあった。でも、それはいずれも時代が混迷化したときである。今回は、それにプラスしてNHKの大河ドラマの主人公の兄が松陰ということもあえおう。
 松陰は幕末、日本が西洋列強に侵略されるという危機感を、最も早く抱いた1人だ。
 1853年にペリーが浦賀に来航すると、海外の事情を知ろうと米国密航を企てるが、幕府に捕えられる。萩の自宅に幽閉され、倒幕を宣言していたことから、橋本左内、頼三樹三郎ら と安政の大獄に遭う。30歳だった。

久坂玄瑞ら多くの逸材を輩出

 謹慎中に子弟教育のために開いたのが「松下村塾」で、ここで教えたのは、わずか3年弱だが、明治維新の原動力となった久坂玄瑞、高杉晋作、木戸孝允、伊藤博文、山縣有朋、前原一誠、品川弥二郎、楫取素彦(かとり もとひこ・初代群馬県令)らが学んだ。
 松陰は、謹厳な思想家、教育者という印象だが、それは明治に弟子たちが威光にあやかろうと作り上げた「虚像」らしい。評者も松下村塾を訪れたが、10畳 くらいの狭い部屋で、塾生たちは米を持ち寄って、共同生活をしながら切磋琢磨し合っている。松陰は塾生1人1人の性格を熟知していて、ふさわしい指導をし ている。

桐原健真著
 短期間に多くの人材を生んだ松陰はどんな教育者だったのか。桐原健真の「吉田松陰―『日本』」を発見した思想家」(ちくま新書、820税別、244ペー ジ」は、膨大な書簡や意見書を分析。国際情勢にも通じた広い視野を持ち、失敗と蹉跌を繰り返し、思想を大きく展開させたと説く。   
             
楠戸義昭著
 楠戸義昭の「吉田松陰―人を動かす天才の言葉」(三笠書房、590円税別、246ページ)は、教育者の視点から論語や孟子を軸に、人格の陶冶を主眼に置き、幕府の弾圧に屈しない生き方が、子弟に強烈な印象を与えたとみる。

津本陽著
 津本陽の「吉田松陰―異端のリーダー」(217ページ)は、伊藤と山縣への接し方の違いから、伊藤の素直で素朴な性格を愛した。山縣は「尊王攘夷派」と 印象付けるために、「松陰の弟子」を、利用したとみる。安藤優一郎の「30ポイントで読み解く 吉田田松陰『留魂録』」 (PHP文庫、880円税別、199ページ)は、辞世の歌とともに有名な遺言で、幕末の緊迫感を背景に読み解いてほしいとする。

 この他、松陰の著書、「講孟余話」の解説書など十数種類が並ぶ。当時、私塾では「松下村塾」のほか、大塩平八郎の洗心洞、緒方洪庵の適々塾、本居宣長の 鈴屋塾などが競って子弟教育に当たっていた。同郷の先輩ということもあって、安倍晋三首相も「松陰先生を尊敬する」と言う。その松陰は、人間に一番大切な のは道義だ。国家も道義国家でないといけないと説いている。

 


  2015年3月4日(水)

栗原 猛(くりはら・たけし)
朝鮮生まれ。新聞社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」「評伝 奥野誠亮」など。趣味は古寺古社めぐり。
    
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