ブックレビュー
 ブックレビュー

国家と秘密―隠される公文書
 情報公開は世界の潮流

 
久保 享  瀬畑 源  共著
 
集英新書(720円、税別








情報公開の意義や歴史などを、欧米各国と比較しながら、日本がいかに遅れているかを説く。

各省庁は毎日、膨大な文書を作るが、系統的に管理していないので検索できず、一部保管されても大半は焼却処分されている。年金や税制の政策決定の背景や実 施状況、責任の所在などを知りたくてもできない。例えば、1940年代の日中関係を見ると、現地からの情報はあるが、外務省が発した指示などは保存されて いないので、日中関係の全体像の把握は難しい。日米、日台関係を研究する場は、公開の早い米国や台湾の公文書館に行く方が早い。

駐留米軍を違憲とした伊達判決を心配した田中耕太郎最高裁長官が米大使に密かに会い、伊達判決を破棄すると約束したとする第一級資料が米側から明らかに なった。岸信介、佐藤栄作両元首相が米国のCIAから政治資金を受けとっていたことが明らかになったのも米側の資料公開がきっかけだ。

政府や官僚が情報公開に消極的なのは、情報を独占していた方が国民や企業をコントロールしやすいし、政策ミスがあっても責任を問われないためだ。行政は国民の税金でやっている以上、情報は公開し公正な評価を受けるのが民主主義の常道である。

情報公開の歴史は、大気汚染や水質汚染、薬害問題で、データ公表を求める空気が強まり、市民オンブズマンによる交際費や食糧費の公開が続き、情報公開への 認識が高まった。住宅金融専門金融会社(住専)の不良債権問題では、財務省(旧大蔵省)が「守秘義務」を盾に検査結果の公表を拒んだが、国会は国政調査権 を発動して公表させた。

こうして1998年に情報公開法が制定される。情報公開は「お願い」でなく「開示請求権」となり、開示されない場合は「違法」として司法に訴えることができる。

公文書管理に熱心だったのは福田康夫首相で、2011年の「消えた年金」問題は、公文書管理がずさんだったからだという理由を立てて、公文書管理法を制定 し、公文書の作成、保存、移管、利用の管理を義務付けた。原子力災害対策本部の議事録未作成は、検証に必要な議事録を作っていなかった。

情報公開の流れの中で、特定秘密保護法を見ると、秘密の範囲があいまいで広い。行政機関が「特定秘密」を指定する際、第三者機関によるチェックの仕組みも ない。英米の文書管理は、日本47人(定員、所蔵量57キロ)、韓国340人(177キロ)、米2720人(1400キロ)格段の違いだ。米国では過剰機 密にやかましい。秘密が多いとかえって漏えいが起こりやすくなるからという。本書はわかりやすく特定秘密保護法の撤廃と情報公開、公文書管理の徹底を訴え ている。

 


  2015年1月22日(木)

栗原 猛(くりはら・たけし)
朝鮮生まれ。新聞社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」「評伝 奥野誠亮」など。趣味は古寺古社めぐり。
    
過去の記事へ


 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.
 
index31.shtml