ブックレビュー
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「そして、メディアは日本を戦争に導いた」

著者 半藤一利・保阪正康
東洋経済新報社 (1500円、税別)




「立ち止まって考え直すときだ」


  刺激的なタイトルである。昭和史研究では名うての半藤、保阪両氏の目には、現在の日本は昭和の初め日本が日中、太平洋戦争に突き進んでいった時代に、似た危険な空気を感じるからだろう。

 本書は、戦争を批判していたメディアが、なぜ権力に取り込まれ戦争を煽りに煽ったのかがテーマだ。どうも国民は戦争が好きだったわけではないが戦勝話が好きだ。だから戦争英雄の活躍ぶりや大本営が操作した戦勝や記事は、新聞や雑誌の発行部数を飛躍的に伸ばした。メディア側も部数拡大の目先の魔力に惹かれて戦争を煽っていく。

 一方、昭和8年から9年にかけて新聞紙法、国定教科書法、出版法が次々に強化され、社会構造の全体がものすごい勢いで暴力化していったという。そうした中で桐生悠々、石橋湛山、菊竹六皷(ろっこ)、伊藤正徳、清沢洌らは戦争反対の論陣を張り、気骨のあるところを見せた。

 昭和一けた時代の歴史から学ぶものは何か。両氏は「教育の国家統制が始まるとまずいということです」という。次に情報の統制が一番よくない。言論が不自由になってきて、経済が悪いと不満からテロが起こりやすくなる。

 今の日本は、特定秘密保護法案の強行採決、教育特基本法の改正、日本版NSCなどをめぐる動教育基本法を作って教育を改変し、道徳を復活させる動きもある。権力者は常に教育と言論を統制したがる傾向があるので、日本には危険な兆候がありますと、保阪氏は警鐘を鳴らす。

 情報の統制ということでいうと、通信傍受法、個人情報保護法とか言論を縛るような法律ができている。個人情報保護法は言論を縛る法律に見えないが、取材対象が公的な立場の人であっても、この法律を盾に取材を拒否することがあるらしい。

 両氏の心配は日本人の国民性にも及ぶ。日本人は、カーッとなって一気呵成になりがちだ。極端なナショナリズムへなだれをうってしまう。いまこそメディアは、「私たちは雪崩現象を起こしやすいんだから、なおのこと、何かにつけて自覚的に一度立ち止まって冷静に考えなおすという姿勢を持つべきなんですよ」と強調する。至言である。  


  2014年1月13日(火)

栗原 猛(くりはら・たけし)
朝鮮生まれ。新聞社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」「評伝 奥野誠亮」など。趣味は古寺古社めぐり。
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