ブックレビュー
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「町工場からの宣戦布告」 
  
 北沢 栄著
 産学社 (1600円 税別)
 




中小企業の戦い
メガバンクの巧妙な罠


 貸しはがしの実態を告発

 下請け企業の経営者が、メガバンクの巧妙な「貸し剥がし」や「デリバティブの罠」に遭い、窮地を切り抜けていく衝撃のドキュメントである。

 「貸し渋り」に加えて「金利の引き上げ・期間短縮」や「借り換え時の融資額の削減」を通告され、銀行が勧めるデリバティブに手を染める。解約を申し出ると「国際的な契約でキャンセルは不可能」と脅され、解約清算金の計算根拠も「公開していない」とにべもない。

 デリバティブに安易な契約をした経営者にも問題ありだが、デリバティブそのものが複雑で、「領収書も発行しない」となると、犯罪的ですらある。日本の全企業数の99%は中小企業で、うち7割は赤字だといわれるから、日本中で毎日この種の問題が起きているのではないか。

 銀行には不良債権の処理で12兆円余りの公的資金、つまり国民の税金を投入してバックアップした。まだ返却中だが赤字の銀行には法人税が免除されている。一方、国民は長い間、「ゼロ金利」なのにもかかわらず、苦しい懐の中から銀行を助けていることになる。

 著者は共同通信社で経済部、ワシントン特派員を通じて、国際金融問題に精しい。「厚生労働省独立行政法人・公益法人等整理合理化委員会」の座長で報告書をまとめ、税金の無駄使でも積極提言している。

 日本経済を支える中小企業の厳しい環境と、銀行の社会的使命が改めて考えさせられる。ここにも政治の出番がありそうだ。


  2013年7月4日(木)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


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