ブックレビュー
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「日本の転機―米中の狭間でどう生き残るか」 
  
  著者  ロナルド・ドーア 

 ちくま新書(840円 税別)
 




日本が米国の衛星国では困る
「米中冷戦」の中でどう生きるか

 米中の間で日本はどんな道を選ぶべきか。ユニークな発想で知られる欧州の知日派の長老、87歳になったロナルド・ドーア氏の著書である。

「米中の冷戦」が進展し、両大国の狭間に位置する日本にとっては、その両国の勢力均衡が大変化するという事態になると、死活の問題となる。そこで著者は、日本はいつまでも米国の核の傘に守られていては、米国の従属性に甘んじることになり、独立国になれないというのが著者の主張である。

  確かに日米関係の密接どの度合いは、毎年開かれている「2+2」(日米安全保障協議委員会、両国の外相、防衛相の会議)の2012年の声明では、日本が米国の巻き起こし政策により深く関わることを約束している。この先日米関係はどこまで密着になってしまうのだろうかと心配になるほどだ。

  その補助線として「核」を俎上にのせ、人類は核兵器のコントロールがいかに可能なのかを問う。祖父として孫の時代を心配する学者が、徹底したリアリズムを振るって日本の経路を描いている。

  米国への従属的な依存は、永遠に有利な選択肢ではあり得ない。現在の核不拡散体制に代わる新しい核兵器管理体制を提唱して、米国との軍事同盟を緩やかに解消していくことは日本の安全保障にとっても、日本の国際的な名声にとっても「人類の進歩」にとっても、豊かなみのりをもたらしてくれるという。

  ドーア氏が強調しているのは日本の独立だ。米国の衛星国では困る。「占領解除の第一歩として唯一の被爆国の日本が、核不拡散条約(NPT)の改定を提案するといい。今中東におけるイスラエルの核兵器独占を守るためにしか使われていない核不拡散論のまやかしを暴いてゆくことが必要です。

  米国は大いに怒るだろうから、これは独立への一歩となる。今日本は米国の核に報復を約束してもらっているが、非核の道を歩んだ国は核を持つ3つの国に報復を保証してもらえるといいう条約だ。

  ドーア氏の提案には賛否はともかくとして、こうした大きな発想に立った外交構想が日本でも生まれてもいいように思う。


  2013年2月27日(水)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


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