ブックレビュー
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  日本近代史
  
  著者 坂野 潤治  

   

ちくま新書(1100円 税別) 




 文明や国家には、興と亡がつきものだ。本著は、日本が激動した1857(安政4)年から、1937(昭和12)年までの80年間を、「改革」「再編」「危機」など6つに区分して、それぞれの時代の人物に焦点を当てて概観する。

 「改革」は、尊皇攘夷と西郷隆盛らによる合従連衡、「再編」の時代は、大正デモクラシーの時代で、立憲政友会の結党、日露戦争と政界再編、庶民宰相と呼ばれた原敬首相の誕生だ。

 「危機」の時代は、奇しくも現在の民主、自民と同じ憲政会と政友会による2大政党時代だったが、ロンドン海軍軍縮と統帥権の独立問題が起きて、満州事変も重なる。景気が極端に悪くなり、東北の農村では娘さんを売りに出すという事態になる。窮状に同情した軍の青年将校が右翼の青年と結んでテロが頻発する。
 
 政友会と民政党(憲政会)は、主導権争いを繰り返し、双方の内部対立も激化。一方、国内の指導勢力も四分五裂状態になり、対外関係を制御できなくなる。日中戦争を途中で止めたり、太平洋戦争を回避を目指す指導者もいなくなる。

 そして異議の申し立てが、政党、官僚、財界、労働界、言論界、学界からもなく「崩壊」の時代に入っていく。

 分析はここで終わるが、著者はあとが書きでも指摘するように、東日本大震災が起きた2011年3月11日は、日本が「崩壊の時代」に入り口に立っていた日中戦争の勃発の次期に酷似しているのではないか。

 国難を迎えてからの日本には、「改革」への希望も指導者への信頼もない。東北地方の復旧、復興は日本国民の一致した願いだが、それを導くべき指導者もいない。指導者たちは昭和十年代初頭のように支部五列して小物化しているーと厳しい。

 国論が分かれる原発や消費税増税などのテーマと、2大政党の在り方、野党の存在、メディアの対応、政治家が小物化したのはなぜかなど、さらに続編を期待したいところである。

 


  2012年7月24日(火)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


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