ブックレビュー
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  「財務省のマインドコントロール」
  
  著者 江田 憲司  

    幻冬舎 (952円 税別) 




「増税」の前にわが身を削る努力をするべきだ


 増税不可避という本は書店に積み上げられているが、これは増税を批判する立場からの一冊。のっけから改革派知事、片山善博元総務相の衝撃的な話で始まる。昨年末、東日本大震災の復旧・復興の第3次補正予算案が混乱したが、「真の原因は、財務省が震災を機に増税をすることにこだわって進まなかった」「地方自治体の対応がまずいとか、菅首相(当時)が混乱したためとか言われているが、すべて財務省がために流している」―。 

 国会答弁などで財務省はこれを否定しているが、復興を人質に増税が決まるまで復旧・復興予算を組まなかったとすれば、江田氏も言うように「救急病院運ばれた患者に『治療費の返済計画を提出するまで待たせておけ』」というような犯罪的な行為である。

 こうした話が紹介されていく。IMF(国際通貨基金)が、日本に消費税を上げるべきだと要請したが、これはIMFに出向している財務省関係者の見解で、「財務省がIMFの名を借りて、宣伝した」―。

 ギリシャは4人に1人が公務員、給与は民間の2〜3倍。年金は現役時代の96%(日本は59%)で、経済規模は神奈川県とほぼ同じで、しかも対外債務国である。必要以上に財政危機が強調されすぎるのではないか。

 日本の個人資産は1488兆円、企業や国が持つ金融資産は4203兆円(日銀資産循環統計)、日本の海外資産は250兆円、さらに外貨準備は世界第2位の100兆円だ。日本が円高なのは市場関係者が「日本の資産は安全だ」と見ているからではないか。

 企業は経営難になると、まず社長や役員の給与カット・退陣、社員の給与や人員削減、事業の効率化、遊休資産の売却―などをするが、野田政権からはムダ排除など改革の声が聞かれない。

 英国では航空母艦をオークションに出そうという話まであるといわれるが、まず国の税収が増えるように景気を浮上させ、行政のムダを徹底排除する努力が不可欠ではないか。江田氏は旧経産省出身で、橋本政権の秘書官時代の省庁再編では霞が関の猛反対を経験した。現在は国会議員。霞が関の内側からの指摘だけに、役所の本音などにも触れられて興味深い。  

 


  2012年5月25日(木)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


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