ブックレビュー
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  体制維新―大阪都
  
  橋下徹・堺屋太一 著  

    文春新書(850円 税別) 




政治、行政の統治システム変革の時


  この国を立て直すには政権交代だけではなく、政治や行政のシステムを変革することしかないーと、橋下、堺屋両氏の主張は明快である。

 橋下氏が2008年2月に府知事に当選直後、真っ先にしたことは、新年度予算を止め、暫定予算にして財政健全化法案を作ったことだ。当選したての首長が、決まりかけていた予算案を組み替えるという決断は簡単にできるものではない。

 橋下府政では、伊丹の廃港、1100億円の収支改善、庁舎移転、学力テスト市町村別結果公表、国直轄事業負担金制度の廃止問題、大阪府公務員制度改革、国の出先機関移転問題、槇尾川ダム建設中止―などに取り組んだ。

 組織や制度を変革しようとすると、猛烈な反対が起きる。官側は権限や既得権の削減が嫌だから、審議会の学識有識者や関連企業などを巻き込み、巧妙にサボタージュもする。だから怒鳴っても官僚は動かない。役割分担を決め大きく方向を変えるときは政治が責任を持つことだという。

 橋下氏の言動については、一部メディアや有識者から「ハッシズムだ」など厳しい批判があるが、国民はファッシズムを喝采するほど愚かではない。どこを改革しなければいけないのか、消費税増税という小手先では済まないことを見抜いているのではないか。

 「大阪都構想」は、大阪だけの問題ではない。国は国の仕事に専念し、基礎自治体にもっと予算や権限を渡すべきだという主張である。行き詰まった政治や行政に新風を吹き込むために、統治システムの在り方の議論を深めるときである。          


  2012年5月15日(火)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


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