ブックレビュー
 ブックレビュー
  英国メディア史
  
  小林 恭子(ぎんこ)著  

    中公選書(1900円 税別) 




「権力への批判」を貫いた英メディア


 英国のメディアの誕生から現在までが、それぞれの時代を象徴するようなエピソードでつづられていて大変興味深い。英国では階級制度が残り、肌の色も考え方も異なっている。こうした社会の現実を反映して、メディアには「中立」とか「不偏不党」というしがらみはない。日本の記者クラブ制度はない。選挙になるとメディアは支持政党をはっきりさせるが、その政党が公約に違反をすると手厳しく批判する。
 新聞・雑誌が「PURES」(プレス)と呼ばれるのは、15世紀にグーテンベルグが発明した活版印刷機が、ロンドンのウエストミンスター寺院の一角に置かれて印刷所を開業したのがはじまりだ。程なく印刷物の影響力を知った王室当局は、免許制度、統制や検閲、投獄、懐柔などが繰り返されるが、こうしたリスクにさらされながらも、新聞人は「王室批判も含めたありとあらゆる議論を世に出してゆく」ことで、権力に屈しない伝統が芽生えたと、著者は膨大な資料を駆使して強調する。
 英国の思想家、ジョン・アクトンが、「権力は腐敗する。絶対的な権力は絶対に腐敗する」と有名な言葉を吐いているが、議会制民主主義の危機といわれる今こそ、メディアの「チェック機能」が重要である。


  2012年3月10日(土)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。


過去の記事へ

 


トップページ会社紹介著作権についてお問い合せ
Copyright (c) Flying Garden Rights Reserved.