ブックレビュー
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  「元内閣総理大臣村山富市の証言録
  ―自社さ連立政権の実相」
  
  編者 梶本幸治 園田原三 浜谷惇
  (新生舎出版・2100円=税込) 




政治のトップは歴史観と勇気が大切だ

  連立政権では少数党出身の首相であっても、歴史観と使命感、勇気さえあれば、相当のことができるーということを本書は教えてくれる。
1994年6月、自民223議席、社会70議席、さきがけ13議席の3党による村山連立政権は、自民党の3分の1の勢力の社会党委員長が担ぎ出された。自社両党間にはこと内政では、相手を理解し合える土壌ができていたのである。残る違いは、日米安保、自衛隊と憲法問題、戦争認識だが、その違いは残したまま一気に突き進んだ。
この結果、村山政権には「首相になりたいために党を潰した」ーという批判がつきまとうことになる。

 94年は、奇しくも戦後50年の節目の前年に当たり、その年に護憲と平和、戦争責任をはっきりさせよーと主張してきた党のトップが、首相になるとは因縁めくが、村山氏は「自分の歴史的使命を考えたら、タブー視されてきた歴史認識や戦争認識にけじめをつけることだった」と証言する。それがいまやアジア外交の柱になっている「村山談話」、正式には「戦後50年に際しての談話」である。
「談話」は、簡単に決まったわけではない。自民党内には「何度も謝罪するな」「あの戦争は自衛のためで、白人の植民地を解放もした」など、根強い反発があった。自宅には「月夜の晩ばかりではない」といった手紙や、深夜に嫌がらせの電話やファクスが届いた。結果は社会党が連立政権を離脱する寸前のところで、自民が譲った。「談話」は、第2次世界大戦中の日本の行為について、「植民地支配と侵略」、「国策の誤り」、「痛切な反省とお詫び」―の3点をはっきりさせた。

 翻って野田政権の使命は、900兆円もの財政赤字をつくった政と官のムダを作る組織を改革し、日本再生の道筋をつけることだが、財務省の御輿に乗って増税路線をひた走っている感じだ。本書は政治のトップが歴史観や使命感、勇気を持つ大事さを教えてくれる。

(ジャーナリスト 栗原猛)


  2011年11月22日(火)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。
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