ブックレビュー
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  「長宗我部」バジリコ出版




企業経営や政治判断にも参考に
大いなる血脈を描いたクロニクル

栗原 猛

 秦の始皇帝一族の流れを汲むといわれる渡来人、長宗我部家の2000年以上にわたる歴史である。著者は、「自宅に伝わる系図を一人ひとりたどっていくうちに、先祖が語りかけてくる「血脈」みたいなものを感じて、まとめておかなければいけないという気になった」という。系図の中には、名君がいたが、暗君もいたかもしれない。その中で著者が印象に残った人物は、長宗我部家の本流の最後になった22代盛親と、21代元親の末弟、親房(著者は親房の17代目に当たる)の2代目の五郎左衛門の2人だという。

 盛親は大阪夏の陣で、豊臣方について徳川家康に決戦を挑んだ。しかし、敗れて京都の六条河原で斬首される。その最後は、従容としていて見事だったといわれるが、著者は「己の名を立てるために一瞬にすべてを賭けるところがあった。家名のために義に殉じたが、長宗我部家の流れを断っている」という。 一方の五郎左衛門は大阪の陣に参加した後、土佐に引き上げたが、既に土佐は山内家の時代になっており、入牢、出獄して結局、山内家に26歳から69歳まで43年間仕えた。五郎左衛門が隠忍自重の生涯を送ったのは、ひたすら家名を残すことにあったと著者は見る。対照的な生涯を送った2人は、平成の時代にも人の生き方の質を示しているようにも思われる。

 その時代時代の当主たちの考えや行動が、生き生きと描かれていて、企業経営者の緊急時の対応や政治判断の参考にもなりそうだ。特に、家を継ぐことと、企業生命などは相通ずるところがありそうな気がする。

 表紙の文字「長宗我部」は書家の手島右卿氏


  2010年6月15日(火)

栗原 猛(くりはら・たけし)
北朝鮮生まれ。終戦時、清津から3カ月間、徒歩で板門店へ。通信社記者を経て、マスコミ志望の学生と活動中。著書は「改革はなぜ進まないか」、編著に「私の後藤田正晴」など。
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